1.理論 統合化された中心性指標は、無限級数関数になるので理論上は無限回の演算を行わなければならなかった。ハミルトン=ケーリーの定理を用いることでnxnの行列Aについて、Aのn乗の行列をAのn-1乗以下の多項式で置き換えられることを示した。したがって、その演算回数は、n-1回だけになる。このことの意義は、演算回数が減っただけではなく、パス長との関係の理論的含意も導き出せた。 2.調査データ 統合化された中心性指標で扱ったデータは、地域権力構造研究で著名なHunterの調査データである。この調査データは、公開されていないが、著書『Community Power Structure』の図表より復元した。図表間に矛盾があったため独自の方法で復元した。その手法とは、それらの矛盾を組合せ最適化問題と見なし、分岐限定法により最適解を求めた。この復元手法とその2次分析の結果は、下記の研究発表の欄にある数理社会学会の機関紙『理論と方法』に掲載される予定である。また、基盤研究(B)の「フォーマライぜーションによる社会学的伝統の継承と刷新」の研究会に参加し、これらの成果を報告した。復元手法と古典理論について有益なコメントをもらった。これらの成果は、その研究会の報告書に載っている。 3.調査データを統合化された中心性指標に適用した場合 2の復元データを統合化された中心性指標について適用したところ、比較不可能な組合せが発生した。従来手法の場合、評価が数値であるからあり得ないが、統合化された中心性指標の場合、評価が関数となるのであり得る。比較不可能な場合、同じ評価の場合と区別して扱う。そうすると、通常言語の中心性指標の定義で最低限言えるのがどこまでかを示すことができた。これらの成果を理系の研究集会であるSeta Seminar on Mathematical Analysisで報告し、有益なコメントをもらっただけではなく、最先端のアルゴリズムや本研究に使えそうな数学の定理を紹介してもらった。 4.復元データの公開 今回復元したHunterの調査データを下記のURLで公開した。 http://scs.kyushu-u.ac.jp/~matsuda/hunter/ 他の研究成果も随時公開して行く予定である。
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