本年度は、岐阜県を対象として介護保険サービス事業の実態に関する調査を行った。介護保険制度開始から半年を経過した時点での岐阜県内の介護保険サービス事業者の実態をみると、営利を目的とした民間事業者が、一時は参入を試みたにもかかわらず半年後には事業を中止、あるいは継続はしているものの当初計画しただけの事業規模を確保することが極めて困難な状況にあるということが明らかになった。そしてその大きな要因となっているのは、従来の措置制度下で在宅福祉サービスの提供の主要な委託先となっていた社会福祉協議会が介護保険サービス利用者のほとんどを、引き続き介護保険サービスの顧客として確保しているということであった。そしてそれは利用者の事業者に対する信頼を得ることができるか否かということが鍵となっている。新規に参入した事業者が今後の事業の見通しが立てられない状況のなかで、農業協同組合は、岐阜県内で20カ所のうち12カ所が現在介護保険サービスに参入しており、今後全ての支所でサービスを提供する計画している。新規事業者である農協と他の事業者との相違は、信頼感という点である。農協が地域の中で従来果たしてきた事業に対する信頼感、認知度、そこから判断される農協の経営の安定性が利用者の信頼感を得る結果となっている。また事業者としての経営ということからすると農協は、これまでに他の事業で築いてきた経営基盤が安定していることから、介護保険事業の安定のための計画を中期的に立てることが可能であるということが大きい。 今年度はサービス提供の全体の関連性を把握することを中心としたが、2年目となる次年度は現状の提供体制を改善するための方策という視点から、農業協同組合の可能性と提供組織と利用者をつなぐ役割としての民生委員の可能性を研究課題とする予定である。
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