本年度は、岐阜県内において介護保険事業者として介護保険サービスを提供している農業協同組合(以下、農協とする)を対象として、介護保険事業開始1年半を経過した時点での事業の実態に関するヒアリングを実施した。さらに、農協のヘルパー研修の修了者と現在農協に雇用されているヘルパーに対する意識調査を行った。それを通して明らかになったのは以下の点である。 (1)介護保険事業の運営の実態…介護保険事業に参入した農協のなかでも、当初の見込み通りに事業が展開されているところと、見込みどおりではないところとがみられた。両者を比較してみると、事業が順調に展開されているところでは、住民の二ーズを把握するためのアンケート調査を実施するなど、地域のニーズをもとにして事業の内容を検討し運営がなされていた。介護保険事業を展開する際に、行政による需要見込みによってサービスを決定するのではなく、住民のニーズから出発するという運営が鍵であるといえる。 (2)マンパワーの育成と確保…農協はこれまで農協の事業を担うマンパワーの養成を目的として、ヘルパーの養成研修を実施してきた。それによって多くの3級又は2級のヘルパー資格を所持している会員が存在している。それにもかかわらず、介護保険事業を担うヘルパーが不足したりみつけるのが困難であったりしている。資格を取得した人びとの多くは、会員となっている農協の事業だからとか、介護の知識や技術を家族のために活用したいという動機が多く、仕事としてヘルパーを考えている人が少ないのが実態である。 (3)生活の総合的支援…介護保険の給付対象となるサービス以外のサービス(例えば、大掃除、倉庫の整理など)に対して、農協で組織している助け合いの会が対応し、ヘルパーと助け合いの会が連携を取ることによって、総合的な支援を展開しようと取り組まれている。これによって今後総合的な年活支援が可能になると考えられる。
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