研究概要 |
本研究は、これまで経済的な側面以外には本格的に探索されることがなかった、個々人の高齢期に向けての主体的な準備の意識と行動を明らかにすることを目指した実証的な研究である。 高齢者個々人へのアンケート調査を実施するにあたり、日本の比較対象として、北欧型の福祉国家として特徴づけられるフィンランドを選んだ。高齢化率、住民が就業している産業の構成、及び医療・社会福祉にかかわる社会資源の整備状況を勘案して、京都市(北区)とトゥルク市という二つの都市を取り上げ、両市で各々65歳から74歳までの「前期高齢者」1,000名を無作為に選び、郵送法により調査を実施した。以下、すでに結果の一部を発表している京都市の調査についてみる。 本調査では、経済的側面のみならず、身体、人間関係、心理、各分野における高齢期への準備について尋ねたが、とくに身体的な問題の発生に対する準備について見てみると、高齢者自身は、自らの心身の衰え、及びこれに伴う病気の発生に対して、予防的態度で臨んでいる様子が窺え、特に介護ニーズの発生にあたっては、配偶者による介護を希望しつつ、社会福祉サービスの利用にも開かれた態度を示していることが明らかになった。また、社会福祉サービス利用に関わる自己負担は、おおむね問題になっていない。 この結果については、第9回日仏社会学会コローク「いのちのあり方-大衆長寿時代を考える」(2001年10月いわき明星大学)にて発表した。この原稿は、『日仏社会学会年報』(2002年)の他、フランス、Halmattan社より出版される論文集に2002年中に掲載される予定である。さらに、現在整理中のフィンランド側の調査結果と合わせて、2002年度中に日本社会福祉学会等で口頭発表及び論文での発表をする予定である。
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