本研究の目的は、日本における「二つの文化を背景にもつ子ども達の教育」について検討することである。本研究は二年度にわたって行なわれるものであるが、本年度については主に以下の三点についての研究を中心に行なった。 (1)先行研究の研究 主に欧米の文献と日本の文献を調査し、両者の研究における理論を比較検討した。その結果、日本における「二つの文化を背景にもつ子ども達の教育」に関する調査については、「日本語教育が必要な子ども達への教育」とほぼ同義にとらえられている傾向があり、文部科学省等が行なっている実態調査についてもそうした視点で行なわれていることが分かった。これはヨーロッパにおける教育者達の多くが「二つの文化を背景にもつ子ども達の教育」を「全ての子ども達に対して必要な教育」としてとらえているのと比較すると、極めて特徴的な傾向であると言えよう。 (2)教育政策の研究 また本研究では、日本においてこれまでに行なわれてきた「二つの文化を背景にもつ子ども達の教育」のための政策も検討した。その結果、日本における「二つの文化を背景にもつ子ども達の教育」に関する教育政策は、上記の「日本語教育が必要な子ども達」に対するある種の「サービス的教育」を実施することと考えられており、(一つの文化だけをもつ)日本人の子ども達に対する教育政策としての位置付けを与えられていないということが分かった。 (3)実態調査 現在のところ行なった実態調査には二つの種類のものがある。一つはインターネットを通じて、日本各地の小学校の「担任の先生、教頭先生、校長先生」に「二つの文化を背景にもつ子ども達の教育」に関するアンケートを送り、回答をお願いしたもの。もう一つは幾つかの異なる地域の小学校を実際に訪問し、先生方にインタビューしたもの、である。現在はこの結果を数的に処理したり、記録した音声を文字に起こしたり、といった作業を行なっている。
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