本研究は、高齢者の積極的な社会参加を促す上で重要な意味を持つ当事者組織について、教育学・社会福祉・心理学・社会学・経営学(組織論)などの領域における研究成果を整理し、それらを統合的にとらえる理論枠組みを提示しようとするものである。特に、社会福祉の領域で近年注目を集めているセルフヘルプ・グループの組織原理を理解した上で、それらを学習活動における高齢者間の関係と比較することによって、高齢者の学習、特に社会とのつながりを促す学習活動とその支援方法に関する理論枠組みを再検討することが課題となるだろう。 2年間にわたる研究の1年目にあたる今年度は、理論枠組みの整理および次年度に実施予定の調査の準備をおこなった。理論枠組みの整理については、主としてセルフヘルプ・グループの組織運営とメンバー間関係、経営学の領域における組織運営(企業組織や非営利組織など)等に関する国内外の文献を読み込む作業を中心に研究を進めた。それらの研究における分析枠組みを中心に、そこで前提とされている理論的・社会的背景をも考慮した上で、高齢者教育ないしは社会教育の領域における学習集団・学習者間の関係についての研究と比較検討する作業もあわせておこなった。また、これと並行して進めた次年度に実施予定の調査に向けての準備については、調査の設計・方針や分析方法を改めて検討し直すとともに、調査対象となる高齢者グループを選択するための情報収集・連絡を中心に作業を進めた。
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