本研究第1年目においては、ドイツ全州における「学校の自律化」政策の進展状況を検討し、「学校プログラム」の形成・実施・評価というマネジメント・サイクルの導入、財政面での学校裁量権の拡大、人事面での学校裁量権の拡大等が焦点となってきていることを明らかにした。 それを踏まえ本年(第2年目)は、顕著な特徴を有している次の3州における政策形成・実施過程についての分析を行った。 (1)他州に先んじて外部評価機関「Schulinspektion」を創設するなど、評価を軸とした「学校の自律化」政策の展開に力点を置いているブレーメン州 (2)他州に先んじて財政面での学校裁量権の拡大、人事面での学校裁量権の拡大をモデル実験として実施し、その結果を踏まえて改革を行っているベルリン州 (3)現実の学校改革において中心的役割を果たす教員の資質開発に力点を置いた改革を行っているノルトライン・ヴェストファーレン州 これにより、いずれの州においても、「学校の自律化」政策の展開の要は、教育行政機関改革であることが明らかになった。また、従来の基本法第7条の国家の学校監督権を全学校制度に対する形成権と命令権の総体ととらえる伝統的解釈も変容を求められており、教育行政機関の構造及び機能について、理論上及び実態上分析を行うことが必要であると考えられる。
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