本研究は、当初の計画において、現代の大衆化した教育社会におけるエリート教育のあり方をめぐるさまざま論議をデータベース化し、それを分析することによって政策的な提言に結びつけていくというものであった。現時点でデータベース化はほぼ完了し、その分析もほぼ完了している。この分析を論文化して政策的な提言に結びつけていくことに関しては、下記三論文が本年度末に刊行され、ついで一年以内に国際比較を中心とした関連論文を刊行していく予定である。 本研究において、判明した点は以下の通りである。 1.大学進学者数が僅少の時代とは異なり、教育の大衆化した社会では、独立した機関を設けて大衆と分離した形でエリート教育を行うのはかなり難しく、また望ましくもない。 2.教育の大衆化した社会では、機会均等の原則の上にたって、全構成員が平等な条件の下教育を受けるという前提は崩さず、しかし、その中で可能なエリート教育を施していくのが望ましい。要するに、エリート教育を大衆教育と対立する形で想定するのではなく、融合した形で想定するのが現実的である。 3.入学試験制度も、国家による違いが大きいが、国際的には大学ごとの個別試験よりも共通試験の方向へ向かっており、そしてエリート校と呼ばれる学校でもその共通試験をベースに面接などを加味して合格者を決定している。こういった観点からすると、ますますエリート教育と大衆教育の融合は晋を考えられる。
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