本研究では、当初研究の焦点を収入依存型奨学金政策と効果に絞り、日本への応用可能性を検討することにしていたが、表題にあるように、研究実施期間の間に高等教育財政のフレームワーク自体が大きく変動を続け、より広く、奨学制度がおかれている高等教育の財政環境の背景について、理論的、実証的整理を行うことに力点をおいて研究を実施した。 具体的には、オーストラリア、ニューカッセル大学のDavid Gamege教授と共同で、HECSおよび日本の奨学金政策の動向も含めた、オーストラリアと日本という、歴史、国家システム、人口規模などにおいて距離があると感じられる両国家間において最近の高等教育政策の動向についての比較を行い、その成果を、World Studies in Educationに掲載するとともに、Comparative and International Education Societyで発表し、グローバル化の進行の中で、異なる性格を持つ国家システムの中でも教育政策の共振化が進んでいることを明らかにした。また、ニューヨーク州立大学バッファロー校のジョンストン教授や、同オルバニー校のレヴィ教授らとの議論を通じて、吉田香奈氏と共同で世界比較高等教育会議や高等教育学会等でジョンストン氏の主張するコストシェアリングの観点から、日本の国立と私立の間の学費負担・奨学金政策等についてのリヴィジョンについての提唱を行い、これについては、Levy氏の研究室よりWorking Paperとして出版をする準備を進めている。
|