平成13年度は、12年度の研究成果をふまえて引き続きフィールドワークを行い、グループ活動による子どもの作曲作品及びその形成過程での言語的・非言語的・音楽的ディスコースをデータとして得た。ロンドン大学およびミラノISU大学において子どもの音楽作品の評定を行い、評定結果の分析をKappa及びPage Test for Alternativeを用いて統計的に分析した。それによって、数回の授業を通した各グループ毎の作曲作品の向上(発達)の変化を明らかにした。また、小・中学校間での発達の違いも明らかにした。統計学的に明らかにした各グループの発達の違いを指標として、その違いの背景にある「形成過程」を、主として言語的ディスコース分析の手法を用いて明らかにした。その際、非言語的・音楽的ディスコースも副次的に併せて分析することで、発達の違いの背景を明らかにした。以上の分析から、以下の点が明らかになった。 1.グループによる子どもの作曲作品の形成には、主として言語的ディスコースが関わっていること。特に、モノローグとダイアローグの交代が見られ、それによって子どもが個人思考と社会的相互関係の交代を行っていること。 2.上記2者の交代を通して、子どもは同一レベルでその交代を繰り返しているのではなく、ディスコース上の質的向上(発達)を行い、スパイラル的に発達していること。同時に、ディスコース上の発達は、Swanwick/Tillmanによる、作曲作品の発達モデルに対応していること。 3.作曲作品及びディコースの発達には、道具としての音楽的要素(Musical Features)の使用、教師の指導性、グループ・リーダーの役割、音楽的な先行経験を持っている子ども・持っていない子どもの役割等、幾つかの要因が作用していること。
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