今年度は次の2つの作業を進めることができた。 第一に、「学校開発」に関する理論研究の分析である。すでに収集済みの文献、および9月末から10月初めにかけての現地調査の際に収集した文献をもとに、「学校開発」に関する理論研究を分析した。たしかに、ゲルハルト・アイケンブッシュ(Gerhard Eikenbusch)のように、「学校開発」という考え方はきわめて古い概念であると指摘する論者もある。しかし、おおよそ1980年代以降の動向と見なすことができる。「学校開発」に関する理論研究は、「学習する組織(Lernende Organisation)」をはじめ、さまざまな概念を用いながら、社会の変化、家庭や子どもの変化を背景として、初等教育から中等教育まで、あるいは職業教育の学校をも視野に入れた、きわめて多面的な研究であり、学校評価や教員研修なども含む総合的な研究であることが明らかとなった。 第二に、「学校開発」事例の分析である。9月末から10月初めにかけての現地調査により、いくつかの学校での「学校開発」の事例を調査することができた。現地調査は、校数も限られているため、必ずしも一般化することはできない。しかしながら、ノルトライン・ヴェストファーレン州のギムナジウムなどでは、入念な「学校プログラム(Schulprogramm)」の立案や審議をとおして、学校運営レベルの「学校開発」を進めていることを把握することができた。 今年度は主に以上のような作業を進めることができた。しかしながら、2年目の課題として予定していた「学校開発」事例の分析にも着手したため、「学校の質」および校長のリーダーシップに関する理論研究に十分な時間を割くことができなかった。次年度の課題としたい。
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