地域子育て支援活動における育児相談が保育者に及ぼす効果を検討することを目的とした2年にわたる研究の2年目である。 前年度の成果をふまえ、2年目の取り組みとして(1)保育所併設の支援センターの育児相談の内容と特徴を明らかにすること、(2)養育者が抱く育児不安の内容とそれが生起する要因を明らかにすること、(3)育児相談を通しての保育者の変化を明らかにし、子育て支援担当者の保育認識にどのような変化がもたらされたかを検討した。 子育て支援センターに寄せられる育児相談は広範囲にわたっているが、健康に関する相談、深刻な虐待といった問題は比較的少なく、より小さな身近な問題が多く、子どものことに限らず、養育者自身の問題に関する相談が多い。また、養育者が抱く育児不安は自分の子どもをどのようにとらえているかという養育者の子ども観との関連が深いと考えられ、特に自分の子どもが「手のかかる子」であるととらえている場合、養育者自身が外界との関わりに消極的であることが明らかになった。育児相談を通して、保育者は養育者の悩みや不安についての共感性を高めていると思われるが、それには子どもをよりよく育てたいという願いから親に対する一方的な要求をするという段階から親の立場に立って子育てを考える段階へと移行していくように思われる。同時に、育児相談や子育て支援への取り組みを通して、学習の機会が広がり保育者の保育に対する見識を広め、保育者自身の主体的な職業生活への関与が促されている。 今後の課題としては、こうした保育者の保育認識の変化は保育者個人の問題ではなく、保育者集団(保育所・幼稚園)や他機関との連携によっていっそう促される傾向があり、他機関との関わりが重要である。しかし、北海道の地域的特性などから他機関との関わりの機会が少ない地域もあり、こうした地域間のギャップをどのように埋めていくかを検討する必要がある。また、そのためのネットワークも考えられる必要があると思われる。
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