外国人の滞在期間の長期化あるいは定住化が進むなかで、外国人児童生徒教育はこれまでの適応指導や日本語指導にとどまらず、学力問題にまで視野を広げて考える必要が生まれている。本研究は、浜松市に焦点をあて、その取り組みの実際と直面している問題を明らかにするとともに、アメリカ合衆国ウィスコンシン州マディソン市の実践との比較を通して、日本における外国人児童生徒教育のあり方について考察することを目的とした。 第一年次は、先行研究をもとに、日本における「外国人児童生の現状と課題」『浜松短期大学研究究論集』を明らかにするとともに、浜松市における調査を実施した。このなかで、(1)浜松市在住外国人の間での滞在期間の長期化および定住化が進んでいること、(2)非就学の子どもたちがかなりの割合にのぼること、(3)公立学校の取り組みは学力保障をめざすまでは至っていないこと、(4)以上のことからも、現状の外国人児童生徒教育は見直しを迫られていること、などが示唆された。調査の一部は、異文化間教育学会第22回大会「日本の多文化教育の可能性」のなかで紹介した。 第二年次は、マディソン市における調査を実施した。そこでは、(1)日本においても外国人児童生徒教育のアプローチを学習言語獲得の視点から根本的に見直す必要があること、(2)新たな教育アプローチの導入には、基礎研究の充実や教員養成・研修など制度面での改革が不可欠であること、(3)学問的知見に裏付けられた外国人児童生徒教育の構築が課題であること、などが示唆された。調査結果については、アメリカ教育学会第13回大会「ウィスコンシン州マディソン学区におけるESL/バイリンガル教育」で紹介し、同学会誌に投稿した。
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