重複障害幼児の視覚活用を促す指導プログラムの開発のために、幼児期における視覚活用の困難さの機能的分類を試みた。具体的には、視覚の活用に何らかの困難のある重複障害幼児をその原因から、眼球の疾患、視覚伝達路の疾患・損傷、大脳視覚野の損傷、および大脳頭頂葉の損傷の4タイプに分類し、それぞれのタイプにおける視機能の特性について事例的に評価し検討した。 結果の概要は以下ようであった。 (1)視力障害は、原因疾患のタイプにかかわらず、眼疾患・脳損傷の程度によって様々であった。 (2)立体視は、疾患・損傷の種類・程度にかかわらず、検出が困難であった。 (3)視野障害は、視覚伝達路の疾患・損傷および、それ以降の脳損傷において必ず出現した。 (4)眼疾患による視野障害と、視覚伝達路以降の疾患・損傷による視野障害とではタイプが異なり、機能的には後者の方が視覚活用の困難さが大きい傾向がみられた。 (5)大脳頭頂葉の損傷のタイプでは、視力・視野などの機能レベルに比して、実際の視覚活用のスキル、すなわち注目・追視・スキャンニングに困難さが大きい傾向がみられた。 これらの結果から、重複障害幼児の視覚活用を促すためには、個々の疾患・損傷および機能レベルに応じた指導プログラムの開発が必要であると考えられた。また、そのためには視覚活用への影響の大きいと考えられる視野について、重複障害幼児に実用的に適用できる評価法の検討が必要と考えられた。
|