研究概要 |
本研究は、内モンゴルにおける遊牧民の定住化にともなう社会変容の解明を目的としている。本年度は内モンゴル自治区西部のオルドス地域と、隣接するアラシャン地域にて実地調査を実施し、その成果を公開した。 1.まず、1958年に人民公社の成立と前後して定住生活に入った経緯を論文「アルブス山とチンギス・ハーン-学術研究と文化復興運動の相互作用-」にまとめた。定住後の人々の意識変化を「文化復興運動」の視点から追求した。 2.かつての伝統的な精神文化の一環を反映する儀礼として、チンギス・ハーンを対象とした政治祭祀があげられよう。そのような伝統的な祭祀状況を「モンゴルにおけるアラク・スゥルデの祭祀」という論文でとりあげている。アラク・スゥルデだけでなく、モンゴルにおける政治祭祀に対し、構造分析をこころみた。 3.現地から多くの手写本を収集し、整理することができた。それらを著書Manuscripts from private collections in Ordus,Mongolia(1)と論文A manuscript from Ordus for healing horse deseasesのかたちで発表した。 今後は、内モンゴル西部での総合的な実地調査をさらに深化させ、社会変容の実態を全面的に解明するために研究をすすめる方針である。
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