研究概要 |
研究計画書においては、平成12年度はアンケート調査を中心とした定量分析を行う予定だったが、初年度と2年度の計画を反転し、本年度は定性分析を中心に行った。組織文化の変化のパターンを抽出する定量分析を行う上では、調査の基盤となる「組織文化」概念の再検討が重要と判断したためである。経営学において盛んに行われてきた組織文化研究を応用し、この概念を批判的に検討して文化人類学の立場からの解釈を試みた。経営学における組織文化の概念は、経営戦略上の操作概念として用いられ、当初から理念や価値の実現を志向する傾向が見うけられる。経営学における「組織文化」の概念設定の限界を指摘し、あらたな病院の「組織文化」の概念の抽出を試みた。さらに、次年度の定量分析のために、組織文化を測定する指標つくりを行った。 以上の分析のために、これまで現地調査を行ってきた福岡県下にある一私的病院において、エスノグラフィー分析を継続し、一般スタッフを中心にインタビュー調査を行った。また、全国の複数病院の院長他の管理職を対象に、インタビュー調査を行った。病院の理念と現場での受け止め方、組織に活力をもたらす要因、具体的な活動内容等について問うた。 分析結果は、戦略的マーケティング研究会(国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長長谷川敏彦主催)において定例的に発表した。この成果は、同研究会編集の報告書として、2001年度中に出版予定である。また、成果の一部を「医療白書2000年度版」(医療経済研究機構監修,2000)において、「CSと医療の質」という論文として発表した。
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