2000年度の調査では、ロシア外務省外交史料館には東アジア系移民対策に関わる公文書で、サンクト・ペテルブルグ国立図書館にはウラジオストク、ペテルブルグ、ハルピンで刊行された雑誌、新聞、書籍で、スタンフォード大学フーワ戦争研究所にはロシア人亡命者の日記などで、カリフォルニア州立大学ロサンゼレス校には日本人移民の日本語新聞で、大阪大学附属図書館には『新韓民報』で、日本外務省外交史料館、国会国立図書館憲政資料室には井上馨、副島種臣関係文書などの史資料の収集・蓄積を行った。収集した資史料の分析を踏まえて、課題を三つの流れに大きく分けて、研究を進めてきた。第一には、日本人・中国人の海外移住の突端となった「苦力貿易」、「マリア・ルース」号事件を新しい視点から捉え、移民送出国家であった日本と中国がいかなる移民対策を行ったか西洋列強との不平等条約において日本人・中国人の雇用問題をいかに定めたかを明らかにした。その研究の成果をヨーロッパ日本研究協会の第9回国際学会で発表した。第二には、極東ロシア地域の日本人排斥運動の一貫となった朝鮮人義兵運動をあらゆる視点から捉え、駐浦潮日本総領事館、浦潮居留民会の対朝鮮人移民対策を解明した。その研究の成果を、2000年3月にシカゴで行われたアジア研究学会次大会で発表した。第三には、1860年から1917年までの期間を、自由移民期(1860-83)、移民政策成立期(1884-92)、移民帰化奨励期(1893-1905)、移民制限期(1906-15)、契約移民期(1915-17)の五つの時期にわけて、各時期の極東ロシア地域官憲東アジア系移民対策の変容過程を概観した。その成果を、『人文科科学研究』第105号に掲載した。さらに、極東ロシアと合衆国における東アジア系移民対策を比較の視点から分析し、その研究成果を、2000年6月に上智大学で行われたアジア研究学会日本支部の第4回年次大会においてセクションを組織し、研究成果を発表し討論を行った。
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