本年度は、当初の計画通り、関係史料の網羅的な収集を中心に行った。 具体的には、まず明治神宮の誕生に関係した人物たちの手許に残された文書群(渋沢栄一関係で渋沢史料館、阪谷芳郎関係で国立国会図書館憲政資料室など)の調査を行った。これにより、明治神宮の創建へと至る過程について、これまでよりも詳細な事実の知ることのできる史料を、若干ながら見出すことができた。 次いで明治神宮誕生の過程においてとりわけ誘致運動に着目し、いくつも存在した運動のなかでも、史料の残存具合が比較的良好と予想された埼玉県飯能市などを訪れ、飯能市立図書館などにて史料調査を行った。運動の意図などについて興味深い事実がいくつか明らかになったため、現在、このときの成果を中核とした論文を執筆している。また千葉県市川市や神奈川県の箱根地区など、ほかの箇所における誘致運動についても、検討を進めている。 第三に、明治神宮以外の主要な創建神社のうち、北海道神宮・橿原神宮・吉野神宮・平安神宮・近江神宮を実際に訪れ、またそれぞれの地域の文書館(北海道立文書館・奈良県立中央図書館・滋賀県立図書館など)において、関連する史料を閲覧・複写した。これら史料群の分析から、明治神宮との共通点と相違点について、いくつかの見通しを得ることができた。次年度以降、これらのうちのいくつかに関するより詳細な調査と、さらには宮崎神宮についての事例研究を行い、明治神宮の位置をより広い視野から見る視点を構築したいと考えている。
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