本研究は二つの課題を設定している。すなわち(1)瀬戸内海地域における遊女商売の実態を解明する、(2)東国における芸能興行の構造を解明する、の二点である。このうち(1)に関しては、平成十二年度には、大分県佐伯市で佐伯藩「御用日記」等の調査を行った。その結果、佐伯藩では豊後国の他地域と同様に、八幡宮の祭礼市において大坂以西の市場商人が売買を展開し、それに付随して芸能興行や遊女商売が行われていたことが確認できた。ただし、これら商人のデータが膨大なため、本年度はデータ収集と処理に終始した。具体的な考察は来年度に継続して行うことにする。(2)に関しては、山梨県を対象地域に設定し、史料調査を行った。北巨摩郡宮坂家文書からは、十九世紀に同郡出身の歌舞伎役者が東京で活躍した足跡を見出すことができた。また、これら当初の課題とは別に、天保改革をめぐる大坂の浄瑠璃渡世集団の動向を把握することにもつとめた。
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