本研究の目的は、1939年から75年まで続いたフランコ体制が女性にとってどのような時代であったのかを、以下の点を中心に研究・分析することにある。1.内戦期に共和国側を支持していた女性たちがどのような道を選んだのか。亡命か、国内での抵抗運動か、それともフランコ体制への従順か。2.反乱者陣営を支持した女性たちはどうだったのか。3.女性たちは自らの状況を巡る急激な変化をどのように捉えたのか。4.内戦を知らない世代の女性たちにとって、フランコ体制とはいかなるものだったのか。 本年度はこれまでに蒐集した史料の整理をし、今日に至るまでの研究動向を把握した。その結果、1については新しい史料を発掘しての研究は短期間では困難であることが判明した。この点については、長期的視野で史料蒐集と研究を進めていきたいと考えている。2については、内戦中に反乱軍陣営で組織され、フランコ体制下で再編されたセクシオン・フェメニーナの活動を第一次史料なども用いてかなり詳細に追うことが出来た。ただし、そこでの活動を女性達がどう捉えていたかは、機関紙などの公の文書からは出てこない。この点を明らかにするために、何人かの女性にインタビューを試みた。セクシオン・フェメニーナで活動した女性たちの回想録や女性史研究者たちが行なったインタビューも参照した。 以上のような研究をふまえた上で、フランコ体制下で様々なファクターが複雑に絡み合って生成された「スペインの女性性(Womanhood)」とはいかなるものだったのかについての考察を行なった。
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