研究概要 |
スコットランドの契約派による革命(1638-51年)を理論的に支えた、牧師であり神学者かつ政治思想家でとして活躍したサミュエル・ラザフォード(1600-61年)をとりあげた。彼はイングランドに長老主義教会を確立させる目的で開かれたウェストミンスタ神学者会議へ、スコットランドからオブザーバとして参加した4人の代表の一人である。したがってスコットランド契約派を代表する神学者といえる。しかしチャールズ1世の処刑後、その長子チャールズ(2世)との提携に動く契約派の主流に激しく抗議して、少数派の"抗議派"の立場に立つ。彼の数多くの著作のうち、Lex,Rex,or The Law and the Prince(1644年)に見られる君主と君主政に対する考え方を検討した。 ラザフォードは、共同体 -それはスコットランドにおいては身分制議会という形で表されていると彼はいう- が、君主に統治の権限を委託した、と考える。それゆえ、君主は、神からの統治の義務を果たすことが求められ、もし違反すれば退位もやむなくされると考えた。その場合も抵抗権を持つのは、共同体である。ラザフォードに特徴的なのは、神とスコットランド民族との間に結ばれた宗教的な契約(Covenant)概念である。彼によれば、国王もその契約に結ばれているのである。しかしチャールズ1世は、ローマ。・カトリック的な礼拝という、偶像礼拝を強制した。これはラザフォードから見れば、共同体が国王に抵抗すべき重大な契約違反であった。 今回は思わぬ負傷により、渡航してスコットランドの研究者との意見交流や、新たな資料文献探索ができなくなったのは、残念である。やむを得ずこの仕事は、次年度に遂行することにしたい。さらに、次年度においてはラザフォードとは異なり、チャールズ(2世)との提携に動いた、決議派と呼ばれるより穏健な契約派も視野に納めていきたい。
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