研究概要 |
本年度は、予定通り以下の論点を中心に史料および文献収集を行った。 本研究により新た得られた点は、(1)欧州連邦支持派(「ヨーロッパ運動」)の国際ネットワークの機能と政策過程への影響力、(2)欧州統合における「ヨーロツパ文化」論(欧州審議会の成立、戦後ヨーロッパのアイデンティティの形成),(3)高度経済成長期の米欧関係およびアメリカニゼーション、等である。 とりわけ、(1)および(2)の分析により、欧州統合の推進力として、従来のミルワードなどの国益を重視する統合論(「国民国家の救済」論)ではなく、むしろ連邦主義等のイデオロギーおよび構想の重要性を明らかにした点が大きな成果であった。 また、歴史学の実証的な研究を基に、国際政治学およびEU法、国際法、経営学の研究との学際的な連携、さらに今日的な課題への歴史学からのを試みた((1)現在議論となっている「欧州憲法」論と欧州連邦構想の関係(ヨーロッパの民主的規程、空間規定、文化、アイデンティティ)、(2)ヨーロッパにおける人権レジームの形成など、(3)アイデンティティ、イデオロギーの役割-国関係論におけるコンストラクティビズム論)、(3)高度経済成長期のヨーロッパにおけるアメリカモデルの影響)。 さらに今年度より、学際的かつ国際的メンバーにより、「欧州統合史研究プロジェクト」が発足し、『欧州統合史資料集』の刊行が予定されている。このプロジェクトにおいて、本研究はさらに体系的かつ継続的に発展する予定である。
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