平成12年度の研究実績は次の通りである。 1.愛媛県および広島県域における島嶼部の製塩遺跡を実地踏査し、海岸地形、海藻植生を調査した。当該地域においては圧倒的にアマモ(アジモ)を主要植生とする砂泥性海岸と製塩遺跡との対応性の高いことが判明した。また、海岸部の面積と遺跡から出土する製塩土器の時代幅との相関関係について、示唆的な所見を得ることができた。 2.愛媛県域において製塩遺跡を有する島嶼は、その全周囲が製塩(藻塩焼き法)に適した海藻や地形を擁しているわけではない。そのような限られた環境にあってごく一部の海岸で製塩が行われていたと考えられる遺物散布地も認めた。 2.熊本県天草地方の製塩遺跡および大分県大分市域において製塩土器を副葬する古墳近隣の海岸地域を実地踏査した。海藻植生の点で瀬戸内地域と異なる所見が得られた。 3.京都丹後地方の製塩遺跡を実地踏査し、海岸地域、海藻植生を調査した。当該地域はホンダワラを主として用いた製塩であったと考えられる。遺跡の立地、後背部の地形等でも重要な所見が得られた。 4.本年度実施予定であった岡山、香川県域に関しては文献調査の段階でとどまり、その実地踏査を来年度に持ち越すこととなった。ただし、熊本県、京都府域の調査は次年度実施分を先行して執り行った。
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