今年度は、「四国史」宣命の校本作成のための基礎作業として、各地の図書館・文庫に残されている資料の収集を行った。具体的には、国立国会図書館・国立公文書館(内閣文庫)・宮内庁書陵部・国学院大学附属図書館・天理大学附属図書館・大東急記念文庫・尊経閣文庫・蓬左文庫に行き、『日本後紀』『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代実録』の写本及び刊本の宣命部分の複写を行った。 集めた資料により明らかになったことは以下の点である。 1、『日本後紀』は全40巻のうち現存するものは10巻分のみであり、『続日本後紀』以下の三つの国史に比べ、所蔵している図書館・文庫の数がかなり少ない。 2、『日本文徳天皇実録』と『日本三代実録』とは、同一人物の書写ないしは所蔵にかかるものが、同じ図書館・文庫にセットで残されている場合が多い。 3、『日本文徳天皇実録』と『日本三代実録』の諸本には、ト部兼夏・兼豊・兼敦らの書写や補修について記した本奥書のあるものが多く、もともとト部家に伝存してきたものであることが分かる。また写本自体は多いものの同じト部本系に属しており、伝本の種類は少ない。 今後は、今年度行くことができなかった水戸彰考館・東北大学附属図書館などに行き資料収集を行うとともに、集めた諸本の比較検討により、「四国史」宣命の校本作成を行う。
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