「指向性」による言語変化解釈の可能性研究の一環として、2000年度はその成果を『国語学』51-3(国語学会)において、「アクセント型の獲得と消失における「意識型」と「実現型」-首都圏西部域若年層における外来語アクセント平板化現象から-」を、刊行することができた。また、刊行に先行し、日本大学国文学会研究大会において口頭発表も行なった。 外来語アクセント平板化現象に関する首都圏西部域高校生220人のデータを「実現型」「意識型」という観点から分析した。リスト読み上げ式調査によるデータを「実現型」、「音声アンケート式調査」によるデータを「意識型」として、扱った。その結果、外来語アクセント平板化現象の拡大のような、「気づきやすい」・流行語的側面を持つ言語変化においては、「新形」獲得、「従来形」消失に際して、それぞれ、「意識型」が「実現型」に先行することが確認された。これらは、「指向性」が言語変化にインパクトを与えた結果と解釈できる。また、外来語アクセント平板化現象のような事象においても、これまでの首都圏における共通語化に関する先行研究において言語変化が先行すると指摘されてきた京浜地域が同様に先行することが確認された。また、先行する地域として指摘されてこなかった湘南地域が外来語アクセント平板化現象においては、京浜地域と同程度に先行していることもうかがえた。これは、対象とした言語事象の性質に関わることかも知れない。 京浜アクセント地域のような型の明瞭な地域・外来語アクセント平板化現象のような流行語的側面をもつ言語事象以外における「指向性」による解釈が可能かという検証は、次年度以降の課題とする。
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