本年度は富山方言について、その音声、語彙、文法的特徴に関する調査・考察を行った。当該研究で重点を置いたのは以下の点である。 1.方言の動的側面の記述 方言研究は、現在、伝統的な方言の記述という側面から、現時点での動的な実態を記述していくという方向に向かっている。このような現状に合わせ、本研究では、(1)富山方言の語彙に関して、特に方言と気づかれていないもの、もしくは気づかれにくいものを調査した。(2)富山方言の文法に関して、伝統的な文法現象と現在の若年層の使っている方言文法との違いについて、記述を行った。 その結果、富山方言では小学校などで用いられる語彙が、方言と気づかれずに用いられていること、「来れば」を「これば」と読むような従来からの方言によっても共通語の影響からも説明の付かない独自の変化をしている側面を観察できた。 2.方言の文法体系の記述 従来から方言の文法的記述はいくつか見られたが、本研究では、特に体系的な記述を目指して、現代日本語の研究で用いられる手法を取り入れながら、総合的見地からの研究を行った。特にいわゆる形態論に偏向した文法ではなく統語論へ踏み込んだ記述に重点を置いた。 本研究によって富山方言の文法体系が初めて明らかにされた。
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