平成13年度は、まず前年度に引き続き、冷泉家時雨亭文庫蔵書の中で、藤原俊成及び坊門局(俊成の娘で藤原定家の異母姉にあたる)の自筆本を中心に、仮名字母対照付き翻字本文の作成作業を行った。 藤原俊成自筆『古来風躰抄』については、鳥羽商船高等専門学校紀要にて発表し、上巻の仮名字母対照付き翻字本文を完成させた。坊門局自筆『三十六人集』については特に『元輔集』に注目して字体調査を行ってきた。『元輔集』の加筆訂正部分には字体研究上、親本の影響についてより検討すべき課題がある。(1)諸本との校異・所用字体の比較、(2)『元輔集』以外の坊門局自筆本の検討が必要であることが指摘できる。(2)については、他の『三十六人集』や『周防内侍集』以外に、今年度は新たに『清正集』を入手したので、仮名字母対照付き翻字本文を作成し、これらを比較・検討している。平成14年度には結果をまとめ、発表する予定である。 また、今後字体研究として注目すべき資料については、藤原資経自筆本(冷泉家時雨亭叢書文庫蔵本で私家集が豊富)、冷泉為久自筆本(定家・為相自筆本を整理している)が挙げられる。これらについては、俊成・坊門局とは時代がかなり下るため、今回の研究成果がまとまり次第、字体調査の作業に取り掛かることとした。 なお、本研究で作成したすべての仮名字母対照付き翻字本文は、訂正の有無を確認の上、テキストとしてデータベース化する準備をすすめている。
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