本研究は平成12年度から13年度にかけて実施するものである。本年度はその前半として、文献資料や映像資料の収集、現地調査等による情報収集に力点を置いた。 ・資料収集 『京劇劇目初探』『京劇劇目辞典』などの工具書、『車王府抄本』(早稲田大学図書館蔵)・『京劇叢刊』『戯考』などの脚本集、倉石文庫(東京大学)所蔵の資料などを閲覧・調査したほか、京劇を収録したVCDやCD、ビデオなど映像資料も収集した。また、現存の京劇演目が形成されるまでの過程をより正確に把握するため、京劇史関係の資料収集も並行しておこなった。 ・現地調査 2000年8月および2001年2月の二度にわたり、中華人民共和国の北京市・天津市などに行き、京劇団や京劇学校の関係者に会って聞き取り調査等を行った。すなわち、中華人民共和国建国後から現在にいたるまでに行われた京劇演目の改編や意図や新演目創造について、京劇脚本作家、俳優、作曲・編曲者、教師等にインタビューし、体験談の聞き取り調査を行った。 本年度の研究調査の結果、京劇演目のデータベース化のための基礎資料を把握することができた。と同時に、中国や日本には書籍として刊行されていない脚本資料(冊子や抄本など)がまだ多数存在すること、また、京劇演目の改編や創造の過程についても往々にして公刊資料で公開されている以上の複雑な状況が存在したこと、等がわかった。これらの点については、来年度さらに掘り下げて調査する予定である。 なお、本年度の研究調査の成果の一部は、中央公論新社の「中公叢書」の一冊として、近々、発表する予定である(2001年5月ないし6月ごろ刊行予定)。
|