本年度は、日本と中国の図書館・資料館・博物館に所蔵されている関連文献の調査を中心に研究を行った。幕末明治以後の日中学者の詩文集・日記・書簡・旅行記・回想録・筆談録や書画集などに関する文献調査と実証的な史実の研究を進め、既知資料の再吟味と新資料の発見に基づいて、当時の両国知識人の交流のルート、両国を往来する人々の経歴や活動、彼らの活躍の場となっていた漢詩文社・漢詩文雑誌社や書画会などの実態を探ってみた。新たに発見された清国公使館の人々と日本人との筆談資料の整理を行ったほか、清国公使の黎庶昌の古籍蒐集活動や公使館随員の一人である楊守敬と木版印刷の彫り師である木村嘉平の関係を辿り、清国公使館の活動やそれを中心とする明治前期の両国文人間の交遊の様子を考察した。その成果として、「明治前期における日中文化交流に関する一考察-楊守敬と彫り師木村嘉平との関係をめぐって-」(『江戸明治期の日中文化交流』、頁87-114、農山漁村文化協会、平成12年10月)、「岡田篁所の『滬呉日記』について」(『日本女子大学人間社会学部紀要』第11号、頁231-245、平成13年3月)などの論文を発表し、また、「幕末における日中民間交流の一例-知られざる日本人八戸弘光-」と「黎庶昌とその古典籍の蒐集について」と題する学会発表を行った。
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