研究概要 |
英語と日本語における音韻獲得・発達に関するデータを収集し、比較分析することが本研究の目標である。今年度は具体的に、まず幼児から大人にいたるまでのさまざまな年代層の被験者から「いい誤り」のデータを収集し(308例),Fromkin(1973),Cutler(1982),Jaeger(1992)などに含まれている英語のいい誤りのデータとの比較分析を行った。その結果、両言語では次のような共通点があることが明らかになった:第一に、[place]素性が一番いい誤りに関与すること、第二に、音節の内部構造に違いがあるにも関わらず、両言語においてonsetが関与する誤りの数が一番多いということ。さらに、次のような相違点もあることがわかった:まず英語では[voice]素性が誤りに関与しやすいのに対し、日本語ではこの素性に関する誤りがほとんど観察されないということ、また、英語では「例外的」音過程として処理されている「後舌化」が日本語では一般的である、という点である。この他、日本語の特殊音素に関するデータについても興味深い結果が得られた。 この研究成果は英国エジンバラで開催された"8th Meeting of the International Clinical Phonetics and Linguistics Association"及びイタリアにおける"Conference on Linguistic Theory,Speech and Language Pathology"という2つの国際会議において発表し、それぞれの会議におけるSelected papersのひとつとして選ばれ、出版されることになっている。
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