研究概要 |
アーカイヴからの収穫としては、大英図書館所蔵のGeorgiana,Countess Spencerが残した手稿書簡の中で、特に注目すべきであると予想していたMary Jacksonの庇護を要請する100通を超える手紙をすべてと,Georgiana SpencerがMrs Howeと毎日のように交わしていた手紙を部分的に、2000年度夏に読むことができた。(この資料は読破するのに、年単位の時間を必要とするので、将来更に読みに行く機会を得たいと願っている。)出版された資料についても、あるいは研究論文・書物についても、18世紀関連のものは学内の図書館には所蔵していないものが大部分を占めるので、科学研究費により購入した書籍やEighteenth-Century FictionのCD-ROMが、たいへん貴重な研究材料となっている。これらからチャリティや慈悲心に関わる情報を得て蓄積しつつある。具体的な成果としては、1)チャリティやパトロネッジを求められる側の立場に立つSpencerに関して、不幸な人々の体験に注意をかたむけ彼らに対して慈悲心を発揮することを彼女がどのように自分の日常生活を律する基本姿勢のなかで位置付けているかということを分析した論文を発表し,2)前書きや作品自体に表われている作者の不安や過剰なまでの読者の読み方への注意を、直接的な影響力を使って守ってくれるパトロンの記憶と影を十分に意識しながら、敢えて未知のパブリックに呼びかけていくことを選んだ作者の覚悟の表われであると解釈した論文の掲載が決まっている。どちらかといえば資料が入手しやすい文学者の側からのパトロネッジ観が先行してしまうが、パトロンの側からの考え方をもっと考察に加えていきたいと思っている。
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