1.残念ながら、研究期間内に、FGMを直接扱った作品を分析し、論文の形でまとめることはできなかった。アリス・ウォーカーの作品を再読してみると、本研究代表者の知見ではこの問題を分析するには限界があり、ウォーカー研究者との共同研究が必要であると実感した。今後その道を探っていきたい。 2.しかし、民族、植民地支配、国家をめぐっていかなるフェミニスト言説が構築されているのかについて知見を深め、その知見をもとにして、過去に博士論文として発表した文章の一部を大幅に修正し、論文として発表することができた。諭文では、エリートのアフリカ人フェミニストが、草の根のサバルタンの女たちを代弁/表象するという問題を考察した。「アフリカの女」とひとくくりにされることが多いが、彼女らは、西洋から移入されたフェミニズムや、アフリカの女が昔から育んできた女の力と知恵をめぐって、みずからをさまざまな位置に置く。また、論文で扱った作品では、紛争下のレイプがテーマの一つとなっており、FGMを今後考察するにあたって、その他の性暴力の問題とからめて論じる道筋が見えてきたように思われる。 3.また、FGMを扱ったヤングアダルト小説の翻訳を現在進めている。FGMが高校のジェンダー教育の場で取り上げられる機会が増えてきているので、出版に向けて今後努力したい。
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