Stanley Nyamfukudzaの作品の背景にある、独立前のジンバブエ英語文学の状況や政治情勢について、現在、研究を進めている。その結果、特に、彼を含めたジンバブエの都市部の作家や知識人と独立解放闘争との間にある精神的な距離については、かなり包括的な背景を明らかにしつつある。ジンバブエでは1960年代に国の独立が当時の白人政権に阻止されたことで、アパルトヘイト式の植民地支配が続く絶望的な状況の中、独立解放闘争も実に1980年まで長引くこととなった。その中で起こった、ショナ人の解放戦線グループとンデベレ人のグループの間の紛争は、既に独立した他のアフリカ諸国の政権の腐敗や民族間紛争を独立後のジンバブエにおいて予感させるに充分な材料であり、それが、知識人達の独立解放への幻滅につながることとなった。また、独立前において、彼らの作品は、英国で出版されても、政治的な理由により、祖国で読まれることがないという状況に置かれていた。 こういった状況はNyamfukudzaの作品を考察した場合、彼が描くアパルトヘイト型都市に住む主人公を取り巻く閉塞感、疎外感へのより深い理解を可能にするものである。しかし、一方で、解放闘争からの精神的な距離は、その同じ主人公達が、抑圧的な状況を冷静に見据え、偏狭なナショナリズムに陥ることなくアフリカ人、ジンバブエ人として自己を形成させることを可能にする要素にもなっている。 現在、この研究結果を踏まえたジンバブエ文学批評とStanley Nyamfukudzaとのインタビューを合わせ、University of North Carolina発行の雑誌に投稿中である。また、南アフリカの学会に南部アフリカの読者層に関する内容で発表を申請中である。
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