| 研究概要 |
名詞句における項の統語的実現のメカニズムについて,派生名詞の項構造を綿密に調べ,明らかにした.名詞句における項の実現は動詞の場合より複雑であり,未解明の部分も多い.文における項の実現との相違点,動詞からの項構造の受け継ぎが阻止される場合を整理し,その背後にはたらくメカニズムを明らかにした.この問題は英語のみに観察対象を限定しても解決できないので,ゲルマン・ロマンス諸語およびヘブライ語のデータおよび研究を検討し,それらと英語との違いをも項の統語的実現の観点より明らかにした.研究が進んでいる派生名詞についても,動詞句を内包する名詞句を形成するという説が提出されているが,この説の問題点を指摘した.従来,名詞句と文との間の共通性が強調されてきたが,両者の間の違いこそが,項の統語的実現を含む名詞句の特異性に大いに関わっている事実を立証した.いずれにせよ,名詞句の統語構造の解明は名詞の意味役割付与のメカニズムおよび名詞句における項の統語的実現の問題と密接に関連しており,それらに取り組む過程において,名詞句の内部構造を明らかにすることを目指す.次年度も名詞の意味・統語構造を他言語との比較を通じ,項構造・統語構造の両面から総合的に解明し,名詞句の全体像を構築することを目指し,名詞句の内部構造の精緻化に重点を置き研究を進めてゆく計画である.
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