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2000 年度 実績報告書

欧米におけるコンピュータを利用した学術版文学テクスト編集の現状

研究課題

研究課題/領域番号 12710269
研究機関埼玉大学

研究代表者

明星 聖子  埼玉大学, 教養学部, 助教授 (90312909)

キーワード編集 / テクスト
研究概要

研究計画調書に記したとおり、平成12年度の研究で一番の眼目としたのは、欧米各地の最先端の編集・出版の現状の把握であった。これについては、特に2度の海外出張によって、ほぼ予定の成果が挙げられたといえるだろう。とりわけ、夏に参加したカナダでの国際会議においては、電子テクスト作成の際のガイドラインとして世界的に主流になりつつあるTEIをめぐって、各地の研究者たちと直接議論を交わし、その最新の応用状況について非常に重要な意見交換をおこなうことができた。
こうした情報収集によって明らかになったのは、現実に文学テクストの電子化を進めている研究者たちと、紙の本しかなかった時代に学術版文学テクスト作成について議論してきた文献学者とのあいだの、テクスト概念の理解の乖離である。現在のところ、前者は、あくまでもひとつの作品イコールひとつのテクストという図式の上で、それをいかにディスプレイ上に再現し高度に検索可能なものにするか、を模索しているようだが、しかし、後者の議論では、上の図式は成り立たないことが了解されており、一つの作品について存在する複数のテクストをどう扱うか、というのが、主要な課題となっているのである。とはいえ、両者の立場は一見大きく異なっているようにみえるものの、後者の目指す複数のテクスト作成には、まさにハイパーテクストなどコンピュータならではの技術が大きな可能性を開いているのであり、今後おそらく両者の歩み寄りが急速に進んでいくと思われる。実際、すでにそうした方向での研究もいくつか見受けられており、来年度は、これらの萌芽的な研究に着目しながら、さらに正確な現状把握に努めなければと考えている。
なお、今年度はこのような情報収集以外に、並行して、特に上でいう後者の立場にたった理論的な思考も進め、2本の論文にまとめることができた。前半に仕上げたものは、従来のテーマであるカフカ・テクストの編集をめぐる考察に、新しい視点を若干付け加えたにとどまったが、後半に執筆したものは、作品=ひとつのテクストという図式の終焉の問題に正面から取り組んでおり、今後の研究への理論的基礎を固める重要な一歩が踏み出せたと自負している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (2件)

  • [文献書誌] 明星聖子: "Prozeβか、 Proceβか、 Processか?-フランツ・カフカの遺稿編集をめぐって"埼玉大学紀要教養学部. 第36巻第1号. 71-94 (2000)

  • [文献書誌] 明星聖子: "「正統なテクスト」の終焉-ドイツ文献学史概説の試み"埼玉大学紀要教養学部. 第36巻第2号. (2001)

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公開日: 2002-04-03   更新日: 2016-04-21  

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