今年度の研究計画にもとづき、18世紀後半のドイツにおける文学と天文学の全体像を把握することにつとめた。まず基本参考文献を調査し、18世紀ドイツにおいて文筆家と自然科学者間で活発な相互交流が行われていたことを確認・整理した。そのうえでゲーテとチューリンゲン地方の諸都市との天文学的関連を明らかにした。次いでゲーテ時代の重要な天文学的トピックを選び、その科学的意義と文学作品ないしは作家との関連性を明らかにしていった。研究対象としたのは(1)月面クレーター(2)隕石および火球(3)彗星(4)地球生成・恐竜絶滅に関する様々な科学的議論の4点である。またイェーナ天文台監督官就任後に成立したゲーテの『西東詩集』に収められている気象学・天文学・光学関連の詩作品について分析・解釈をすすめた。以上の研究成果は、ドイツ語論文にまとめ、次号国際ゲーテ年鑑に採択された。またこの関連において、ゲーテ作品に繰り返し現れる気象学モティーフのひとつ「虹」に注目し、「ゲーテと虹」というテーマで口頭発表を行った(5月20日・日本ヘルダー学会にて)。具体的にはゲーテ以前の虹に関する研究史をまとめ、ニュートン光学とゲーテ色彩論の相違点を明らかにするとともに、同時代のイギリス詩人との比較を行い、ゲーテにおける虹のモティーフの多様性・独自性を指摘した。なおこの発表内容については、ドイツ語論文として現在発表準備中である。 また夏期休暇を利用して、1ヶ月ドイツ国内に滞在し、ヴァイマール・ドイツ古典主義文学研究所所属施設(図書館・博物館等)を中心に資料収集・文献調査を進めるとともに、研究者との積極的な意見・情報交換を行った。 なお現在は、18世紀後半の天文学と文学の相互交流において、特に作家兼天文学者でもあったゲッティンゲン大学教授リヒテンベルクの自然科学論文および文学作品、またゲーテをはじめとする人物交流等について調査をすすめている。
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