1.記述文法の作成(否定表現を中心に) 昨年度までの現地調査で収集したスンバワ語のデータ分析を進め、記述文法の作成を行った。文法全体の記述を進める過程で、この言語の特徴として豊富な否定辞の存在があることが判明したため、本年度はこの点に集中して研究を進めた。その概略は以下のとおりである。この言語の独立した否定辞には(i)no「一般的な否定」、(ii)na「否定の願望」、(iii)siong「対置される『肯定』される事柄が認識されている場合の否定」の三つがあり、さらに、(i)は談話辞やアスペクト辞と共起することによってさまざまな:意味を表す。例えば、noと談話辞の一つsiが共起した形は、「強調」(〜だったわけではなく、〜ではなかった)を表し、noと別の談話辞poが共起した形は、将来起こることが予測される事態がまた成立していないことを表す。また、noとアスペクト辞kaが共起した形は、特定の事態についての否定を表す。このような否定表現についての詳細を、9月に論文「スンバワ語の否定表現」の形で公刊した。 2.テキスト集作成 昨年度まで収集したテキストを分析する作業を継続した。具体的には、現地で収集したテキストのテープを転写し、単語ごとに品詞、および意味の情報を付し、また、文ごとの訳も行った。五篇の民話、会話のテキストの処理を完了し、3月にウェブ上で公開した。また、そのうちの一篇をテキストBatu Langlelo (The Langlelo Stone)の形で公刊予定である。
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