研究概要 |
本研究の目的は、主として中国の甘粛省臨夏回族自治州積石山保安族東郷族撤拉族自治県大河家郷甘河灘村、大〓村等に居住している保安族12,212人(1990年)が話しているモンゴル系の言語、保安語積石山方言を危機言語の観点からフィールド調査を行ったうえで、基礎語彙や民話などのテキストを記述し公刊することにある。 この保安語積石山方言は、言語資料が乏しいことに加え、近年若年層を中心に漢語化が著しく、今すぐに消滅するという危険性はないが、遅かれ早かれ消滅の可能性がある言語である。そのため、詳細な調査が求められている。 その第一歩として、今年度は、平成12年8月20日から31日の間、甘粛省臨夏回族自治州積石山保安族東郷族撤拉族自治県大河家郷において、1.社会言語学的情報、2.民族史、3.基礎語彙約200語(甘河灘の老爺2名、大〓の老爺1名、4.民話・昔話(甘河灘3話、大〓2話)、5.保安腰刀の名称とその民俗分類、6.民族文学作品に関する調査を行った。 これらのなかには、社会言語学的情報など従来ほとんどわかっていなかったこと、あるいは民話・昔話のように断片的にしか知られていなかったものなどが含まれており、今回の調査ではじめて明らかになったことが多い。そして、基礎語彙と民話・昔話はMDディスクにも録音され、保安腰刀はその映像も収集しており、今後の研究において貴重な資料といえるものになっている。また、今回の調査では、中国や旧ソ連の研究者が公刊している保安語積石山方言とは異なる興味深い点が多々観察されている。 現在、調査した内容は整理中である。来年度、今回の調査結果をまとめ、報告書として公刊する予定である。
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