1 研究経過 最終年度である本年度は、以下のような研究を行った。 a.引き続き、データの入力を行い、データベースのデータを増やした。入力したデータは、ネワール語で書かれた子供向けの雑誌、4号分、および、対面調査の際にインフォ-マントに聞いた話を入力したもの2話分。これにより、現在のデータベースのデ-タは、雑誌6号分、物語り12編、口述データ2話分のデータベースを構築したことになる。また、パソコン上に構築したデータベースを改良し、データの検索方法を項目を改良した。 b.これらのデータベースを元に、動詞のテンス・アスペクトについて、文脈やコロケーションから、動詞の語尾変化が表すテンス・アスペクトの特徴を分析した。特に、習慣を表す語形、および、動詞に名詞化接辞-guがついた場合の意味の分布についてインフォーマントとの対面調査により調べた。 c.また、ネワール語の出来事の成立を表す形式と状態を表す形式とが否定と関連したときにどのような意味を持つかに関する桐生(2000)の研究を発展させる形で、中国語やタイ語の完了接辞との共通点や相違点を探った。 d.使役接辞に関して、特に、動詞連続構文における分布と意味の分析を行った。 2 研究成果 1)上記aの研究に関して、2001年7月にWorkshop on Tibeto-Burman Languagesで発表した。新たな知見として、ネワ-ル語のテンスとアスペクトの対立が過去対非過去にあるのではなく、未来対非未来の対立にあり、これがBaht(l999)で言う現実対非現実の対立に基づいていることをデータベースのデータによって立証した。 2)使役接辞-kの具体的な分布、中国語とタイ語とのアスペクト的な点での比較、および、名詞化接辞-guのついた場合の意味に関して、現在、論文を準備中である。
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