本年度の研究は、日本における研究(2000年11月まで)と現地に滞在しての研究(2000年12月以降)とに分かれる。 日本においては、ブラジルの違憲審査制に関して、入手可能な判例を中心に研究したほか、同制度を、法的な制度としてのみならず、社会科学上の現象として見た場合はどうなるかという視点から、非法学的文献からの情報も素材として含め、考察することを行った。 ブラジルに到着して以降は、サンパウロ大学法学部を活動の主たる拠点として、まずは違憲審査制を、憲法学からだけでなく他の法学分野との連関を重視しながら研究を開始した。とりわけ、訴訟の一形態としての違憲審査という観点から、ブラジルの訴訟制度体系の中での違憲審査という捉え方も試み、そのために、ブラジルの訴訟制度の根幹の理解に取り組んできた。そして、それ以外の分野についても、いわばブラジル法の総体を違憲審査制を核にして理解するよう、文献の収集とその研究を試みている。そのために、現地の法律家等の協力を請いながら、必要基本文献の選択、文献目録の作成、書店ルートの確保(新刊書および古書)、交渉と購入を行い、入手文献の検討を開始した。同時に、違憲審査制のあり方をブラジルという一つの社会単位の中での対応として捉えるために、現地の法律家の知己を得て、この制度を取り巻く法的環境、またそれを支える法的思考方法、実務家にとってのこの制度の意味を理解できるよう、発問を続けている。現在のところ、知遇を得た実務家は弁護士に偏っているので、今後は裁判官へのインタヴューの機会を得たいと思っている。
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