前年度、医療化と法化の交錯を、医療過誤訴訟における医療専門知識の利用を素材に検討したのにつづいて、今年度は法と法曹の専門性についての考察を深めるべく、弁護士について用いられるプロフェッション概念とその文脈について検討し、「プロフェッション概念に関する一考察」をまとめた。 昨今の司法改革で繰り返し説かれる「プロフェッションとしての法曹」とは、いかなるものでいかなる役割を果たすものか、という問いから、プロフェッション概念の中身とその社会的意義、今後の法化の進展における役割変容の展望を明らかにする試みである。具体的には、伝統的なプロフェッション概念、機能主義社会学者パーソンズの理論を検討した上で、2001年6月に出された司法制度改革審議会意見書の提示するプロフェッション概念の異同と問題点を指摘した。さらに、プロフェッション論の母国であり、現在法化の進展とともにプロフェッションとしての弁護士像が揺らいでいるアメリカ合衆国での弁護士論および弁護士倫理に関する議論を参照しながら、これからのプロフェッションの可能性を模索した。法化の進展にともない、弁護士の専門分化が進み、弁護士を規律する理念が、従来の「プロフェッション」としての使命と自己規律では不十分となっている。その状況をふまえて、合衆国では、多元的な弁護士規制アプローチや、弁護士の倫理的裁量への期待といった議論が出ている。これらが弁護士のプロフェッション性に与える意義を自覚しつつ、日本の司法改革の文脈で新たなプロフェッション像を構築できるかどうかが今後の鍵となるだろう。 さらには医療化との比較と現代社会におけるプロフェッションの意義について検討を加える予定である。
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