本研究は、欧州司法裁判所(いわゆるEC裁判所)および欧州人権裁判所の判決の国内的効力ないし先例としての影響力に関する分析を手がかりとして、日本国憲法における国際関係の司法化への対応のあり方を明らかすることを試みるものである。 したがって、資料・文献の調査・分析に基づく実証的研究が中心となり、研究代表者の所属機関に所蔵されていない資料・文献も多いので、東京大学法学部等に赴いて調査・収集を行うとともに、国内法と国際法の関係について考察している研究者と意見交換を行った。 そうした調査等に基づいて、初年度てある本年度は、まず、条約機関の意見ないし見解が国法体系において有する意味について考察を深めた。とりわけ、我が国が国際人権規約第一選択議定書を批准した場合の規約人権委員会の判断が有する先例としての意味をも視野に入れつつ、類似の問題状況についてのドイツ連邦共和国の学説・判例の分析を進めた。この問題は、本研究が行う検討の前半部分に当たるものである。そのため、今年度の段階では、本研究の成果を総合的に発表した論文等はないが、本年度の研究成果の一部は、来年度中に公刊予定の著書(研究代表者の単著)の構成部分として整理・執筆された(この原稿は、既に出版社に入稿済みである)。 このようにして、本年度においては、資料・文献の渉猟・整理・分析を進め、成果の公表として最終的に執筆する予定の論文の構成を具体化を図った。
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