本研究では電子金融と法整備支援という2つの視座から、日本とオーストラリアを中心にマレーシア、シンガポール、韓国、香港について調査した結果、以下が判明した。 1.整備支援については、オーストラリアでは政府機関(Ausaid)や大学を通じた弁護士や専門家による一般的な法形成支援が日本以上に盛んである(ただし、大学等におけるアジア法の教育は教官ポストの不足により必ずしも十分ではない)が、電子金融分野については政府レベルでの支援活動は殆どなされておらず日本と同様の状況にある。いわゆる途上国に対しては「先進国が経験した実例を後発国に語り伝える」という従来の支援枠組みが有効だが、ある程度離陸した国の先端分野については「先進国と後発国が共に未知の可能性を模索する」方向が必要と考えられる。その際、国際機関や地域連合による取組みだけでなく近隣諸国による草の根的な支援も重要であろう。 2.マレーシア、シンガポール、韓国、香港では、政府の強力な指導力の下、外国から積極的に専門家を招聘して自前で電子金融法整備が行っている(例:マレーシアのMSC)。こうした中、世界に先駆けたシステムを構築する例(シンガポールや韓国のオンラインADR)も随所にみられ、日本は電子金融法の整備について、近年かなり整備を進めてきたものの、これらの国々やオーストラリアよりも遅れている面(例:決済システム法が制定されていない、オンラインADRへの対応が不十分など)がある。電子金融はその性格上容易に国際化するため、一国の制度構築に当たっては他国を参照する必要があるが、電子金融の法整備支援に当たっては、アジア諸国のある程度離陸した国々の専門家が互いに積極的に交流することでその実効性を今以上に高めることが出来るように思われる。
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