研究概要 |
平成12年度は,国内・国外におけるADR(とくにその手続的規整及び判決手続との関係)の実際の状況を調査し資料を収集して,今後の研究の基礎とすることを,研究内容の一つの柱としていた。 この点に関し,まず国内のADRについては,弁護士・司法書士といったADRの担い手となる専門職との意見交換を行ない,またユーザーとしての企業法務担当者などからの情報収集や,国際商事仲裁の現状のヒアリング,裁判所との意見交換なども行なった。とくに弁護士との関係では,岡山仲裁センターの実務と手続的整備について,アメリカ調停者行為規範との比較などに基づく提言と共同研究を行い,その成果をシンポジウムの形で発表した。 国外に関しては,アメリカ合衆国で文献調査を行なったほか,欧州評議会主催のADRに関する専門家会議に出席し,日本のADRとくに労働紛争に関して報告を行ない,また各国からの専門家とディスカッションを重ねて,新たな知見を得ることができた。 また,理論的研究としては,一般理論としては,日本の民事調停手続における手続規整について,近時のアメリカにおける調停者の行為規範に関する議論や判例を参照しながら,情報提供・開示義務の形で考察し,民事訴訟法学会で報告をした。また,個別領域に関する理論として,上記労働紛争ADRに加えて,医療過誤紛争に関するADRのあり方について,訴訟制度との連携を視野に入れたシステムを考察し,民事訴訟法学会関西支部で報告をした。
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