予定が大幅に遅れ、本年度の研究も昨年度と同様に、フランスのアストラントに関する論文の執筆を中心に行った。この論文については後述するが、今年中に博士学位請求論文として提出する予定である。ベネルクスとくにベルギーのアストラントについては資料収集・聞き取り調査等の準備的作業を行った。平成14年2月中旬より3月初旬には、フランスのパリにてF.Chabas教授、R.Perrot教授及びP.Thery教授らから、ベルギーのリエージュにてG.De Leval法学部長の協力を得てリエージュの第一審裁判所副所長、控訴院判事及び弁護士から、それぞれ聞き取り調査を行なった。 前述のフランスのアストラントに関する論文は、その第二次大戦後の変遷の経緯を明らかにするもので、四つの編から成る。第一編はいわば序論で、現行制度の概要、執行方法との関係、適用範囲、発生期(19世紀)を中心とした歴史の概略を扱う。第二編以降は第二次大戦後の変遷に関する考察にあて、第二編では第二次大戦後から1972年7月5日の法律(アストラントの立法化)の前まで(判例法末期)、第三編では1972年7月5日の法律から1991年7月9日の法律(アストラントの現行法)の前まで、第四編では1991年7月9日の法律以後の時期を対象とする。結論部分では、フランスのアストラントと日本の間接強制の基本的な相違点(アストラントが日本の家事審判法上の履行命令及びその不服従に対する制裁の制度に類似する面があること等)を指摘し、フランスのアストラントに照らし、(ベネルクスのアストラントにも触れつつ)、日本の間接強制の立法論的な検討課題となりうる諸点に言及する。
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