平成11年7月から審議が開始した司法制度改革審議会の検討項目として、特異重大事件の刑事訴訟が長期化する傾向にあることを特に問題として、刑事裁判の充実・迅速化策が盛り込まれ、12年10月には中間報告が出されたことから、そこで取りまとめられた充実・迅速化策の検討を先行させて、研究を勧めた。特異重大事件自体の実態を把握できる統計はないため、それを含んでいるだろう長期未済事件につき、その数と原因に関する統計および証拠調べの実態を表す統計を、経年的に調査分析した。その結果、1970年代の訴訟促進方針の結果、長期未済事件の著しい現象を得たが、同じに証拠調べ形骸化が極めて進行したことが確認できた。それにもかかわらず1990年代より事件が増加傾向にあり、未済事件も増加しつつあることから、さらなる充実・迅速化対策が必要であることも確認できた。充実・迅速化策として証拠開示の拡充を条件とした事前の争点整理手続の整備が提言されたこともあり、そのためのひとつのモデルとなりうるイギリスの1996年刑事手続・捜査法の分析を中心に研究を進めた。以上の研究の中間的成果を、平成12年10月に学会で報告し、また12月には刑事公判に関する研究会で報告した。また、成果の一部を学会誌に掲載した。来年度はやはり司法制度改革審議会で議論された公判期日間隔やその上限の問題を中心に、外国での議論を参考にしつつ、さらに研究を進める予定である。
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