本年度は2年計画の初年度として、基礎資料の分析ならびにイギリス・オランダ両国の公的機関、EU・欧州審議会さらに各種の非営利団体から情報収集(文献・インタビュー)を行い、とくに(1)両国における政策の基本方針と政策運営の制度的枠組み、(2)歴史的規定要因、(3)超国家レベルの制度的影響について分析を進めた。 第一の点については、当分野における政策をその目標から概ね3つに区分することが可能であること、またイギリス・オランダは従来、それぞれ異なる目標に従い政策を展開させてきたが、90年代に入り新たに第三の目標が共通して注目されるようになり、両国の政策に類似性が多くなっていることが明らかになった。また国内における政策運営の制度的枠組みや政策主体間関係にも、政策目標に関する以上の重点の推移に伴い変化が生じていることが明らかとなった。 第二点については、とくにイギリスにおいて政策の導入期となった60年代半ばから後半にかけての政府内部文書の検討を進めており、人種・民族・国籍差別への対応、中央政府の補助金による関係自治体への援助、都市街区再開発といった側面が、議論としては独立しながらも、移民に対する入国管理という入り口での規制を含め、互いに密接に関係し影響を及ぼしあいながら政策としての形態を整えていったことが明らかになりつつある。 第三点については、当分野における各国の政策にみられる収斂と、欧州審議会・EUを通じた国際的政策協調の間には相互関係が推定され、またこれらはともに西欧地域における全体的な政治経済的制約のもと生じていることが明らかになりつつある。
|