平成12年度は、ボスニア・ヘルツェゴビナにおける紛争後の平和再建活動の実態を明らかにすることを目標として調査を進める一方で、グローバル・ガバナンスという観点からの理論化に着手した。 9月には、現地の情報を入手する目的で、ボスニアのサラエヴォやモスタルなど訪問し、高等代表事務所(OHR)や、現地で活動する諸国際機関のミッションや、ワールド・ヴィジョンなどのNGOにおいて資料を収集し、現状の聴き取り調査を行った。また、ウィーンならびにフラハに所在する欧州安全保障協力機構(OSCE)の事務所において、欧州諸国やアメリカの対応について情報を収集した。この調査旅行の成果については、未公刊であるが「ボスニア・ヘルツェゴビナ調査旅行報告書」として作成した。なお、ボスニアにおける平和再建活動を明らかにするにあたって、フラハのOSCE文書館は非常に有用であり、別途の資金を用いて同文書館における調査を継続中である。 95年のデイトン合意以降の平和再建活動は、緊急支援を中心とするものから、より長期的な視座に基づくものへと変化しており、なかでも、いかに現地政府と市民の手にこのフロセスをゆだねていくかが最大の課題となっている。また、コソボならびにユーゴスラビアヘと国際的な関心と資金が集まってしまったこの時期にあって、諸機関はより効率的な活動への再編成を余儀なくされている。そのなかで、紛争予防とのかかわりからも注目されるのが、例えば、民族間の分断線を超えた経済統合フロジェクト(サラエボ経済地域構想)や、民族間の信頼醸成をめざした様々な市民レベルの小フロジェクトである。 ガバナンスという理論的な側面からの分析については、現在関連する文献の収集と検討を行っており、二年目の研究活動の課題としたい。
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