本年度は、ボスニア・ヘルツェゴビナとアルバニアにおける紛争後の平和構築活動について、前年度に引き続き収集した研究文献に目を通し、考察を行った。こうした研究の成果として、アルバニアにおける平和再建については、2001年6月に東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究室(DESK)社会科学プロジェクト研究会において「バルカン地域における紛争予防」と題して報告を行った。これは、1997年から98年のアルバニア内乱における紛争予防の失敗と、この事件後の平和再建活動の在り方が、それ以後のバルカン半島におけるコソヴォ紛争やマケドニア紛争へどのように影響を与えたのかを考察した発表である。また2002年1月には、大阪大学国際公共政策研究科・国際公共政策研究会(IPP)において、「人間の安全保障の課題-ヨーロッパを例に」というタイトルで研究発表を行った。この研究報告では、紛争の予防において平和構築が重要であること、そのためにヨーロッパの国際機関とNGOがどのような活動を行い、どのように評価されるのかを明らかにした。さらに、2002年2月には、欧州安全保障協力機構文書館(プラハ)において、国際機関とNGOの活動を中心に資料収集を行う機会をえた。この調査における新たな資料も含めて、3月には「ボスニア・ヘルツェゴビナにおけるオンブズパーソン制度の導入-紛争予防の視点から」という論文が、神戸大学国際文化学部紀要『国際文化学』に掲載された。今後はさらに比較という観点から研究を進める計画であり、そのため、年10月から2003年7月末までの在外研究を通して、バルカン地域における国際社会の介入についての論文を完成させる予定である。
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