この研究は日本の公共政策を議会制度の観点から理解すること、具体的には下記の3項目を初年度の目的とした。 (1)立法過程における観察対象期間の人為的な制限という特徴を考慮した統計的推計モデルの考案。 (2)立法個々の成立確率を規定する要因、議会の制度的構造が立法過程に及ぼす影響の解明。 (3)議会制度が行政や政策の立案・執行過程を派生的に構造化する形態の解明、立法と行政、政策の関係の分野毎、時系列的な比較。 (1)、(2)に関しては、これまでに蓄積した戦後の内閣提出法案に関する法案の提出、委員会付託、採決の議事日程データ・ベースを基礎として、立法時間に関する統計的推計モデルを考案した。こうした作業には、多様な媒介変数の検証に加えて、推計モデルの諸前提の妥当性、説明変数の効果などを確認する必要があり、パソコン、統計ソフトを購入し、いかなる媒介変数の設定が妥当であるかを探り、同時に媒介変数の設定を迂回する方式を検討した。 (3)に関して、これまでの議事日程に関する資料の他に、立法個々に対応する法案提出省庁の組織的情報とともに政策的な結果についての社会・経済的動向もデータ化を開始した。具体的には、法律を管轄する省庁部局の組織や人事、予算、立法以外の活動、また政策分野毎に政策的効果の及ぶ人口動態、関係社会集団の動向について情報収集し、初年度はとくに厚生省に関する情報収集、資料整備を図った。こうした資料収集・整備を効率的に実施するため、研究補助者に協力を依頼し、医療政策に関して聞き取り調査を行った。 こうした分析結果については、とくに(1)、(2)については2000年度アメリカ政治学会における報告論文としてまとめ、また(3)に関する初期の研究成果を関西学院大学におけるMIT東西合同研究会で報告し、国内外の専門家から意見を聴取した。こうした分析結果、意見聴取に基づいて、学術雑誌への投稿論文を準備中である。
|